自動車工学研究室

研究室概要

自動車とそれを使用する人間との相互作用を様々な観点から調べ、自動車をより使いやすく、より環境にやさしく、より安全な移動手段にするための課題に取り組んでいる。主な課題は、車両の制御やドライバに対する情報提供による安全性向上の評価、ドライバの生体情報によると運転負荷の評価、高齢者の身体機能と運転特性や乗降性の評価である。これらの課題に対して筋電などの生体指標および実車を用いた車両挙動に関する実験やコンピュータを用いた交通現象に関するシミュレーションを行っている。

主な研究テーマ

(1) ドライバの生体情報による運転負荷に関する研究
自動車の交通事故件数は年々減少していますが、未だ年間で66万件以上(死亡事故は4,280件)(平成24年中)と依然多く、交通事故の削減に向けて国を挙げた取り組みが行われています。自動車の安全対策は大別すると、事故が発生した後の乗員を保護する車両の衝突安全と事故を未然に防ぐ予防安全があります。予防安全の研究・開発はまだ発展途上にあり、今後さらなる事故削減の役割が期待されています。このテーマでは、筋電などの生体計測と実車やシミュレータを用いた車両挙動の計測を組み合わせ、運転行動に関するモデル構築やドライバ状態のセンシング手法の提案に向けた研究をしています。


(2) 身体機能と運転特性や乗降性の関係に関する研究
我が国の高齢化は急速に進んでおり、高齢者のモビリティ確保が社会的な課題となっています。公共交通ネットワークの拡充はこれらの課題に対する解決策として期待されています。特に、多くの地方都市では、公共交通の利用者は長期的な減少傾向にあり、路線バスにおいては不採算路線の減便や廃止が相次ぐ厳しい状況が続いています。このような状況に対し、コミュニティバス、デマンド交通、乗合タクシーなどが各地で試みられています。このテーマでは、各種の人間工学的データを計測し、それを分析することによって高齢者にも乗り降りしやすい車両構造の評価方法について研究しています。


(3) 情報提供と交通流に関する研究
近年のコンピュータネットワークの進展や、交通情報提供に関する規制緩和注に伴い、車内でのナビゲーションや情報端末による情報提供サービスの利用が普及しています。渋滞情報を取得したドライバは各々の判断によって走行経路を変更しますが、これらの情報提供が交通ネットワーク全体に及ぼす影響についてはまだ分かっていないことが多くあります。このテーマでは、情報提供が車両間の相互作用に与える影響についてコンピュータシミュレーションや統計力学的手法を用い、最適な情報提供について研究しています。


(4) 交通流ダイナミックスに関する研究
交通流ダイナミックスの特徴を最も良く表している現象の一つとして、スムーズな流れから渋滞発生への変化があります。渋滞発生時の過渡的な状態では交通流は非常に不安定化し、追突などの交通事故原因になる可能性があります。このテーマでは、実車や路側から観測された走行データを用い、個々の車両間に働く相互作用の観点から渋滞発生時の交通流ダイナミックスについて統計力学的な観点から研究しています。